ホーム > 家具屋のつぶやき > 家具に海外の木材が使われる理由とは?国内材不足の背景から見る素材の選び方
2026年08月16日
ブログダイニングテーブルの裏に「ウォールナット材・北米産」と書いてあった。ベッドは欧州ビーチ材。ソファの脚はアジアのゴム集成材。国産と書かれた札は、ほとんど見当たらない。日本は森の国のはずなのに、なぜ家具の材料は海外ばかりなのか。
そこで頭をよぎる小さな疑問。「国産材って高いだけなの?」「海外材は品質が落ちるってこと?」「産地で選べば失敗しないのかな」。この三つが引っかかると、値札の数字だけでは決められなくなります。
家具の素材選びが迷いやすいのは、産地の表示だけが目立ち、その裏側にある林業や流通の事情が見えないからです。この記事では、海外材が多い構造的な背景を業界データを交えて整理し、国産材・海外材それぞれの利点を公平に並べます。読み終えたとき、産地の文字ではなく「本当に見るべき一点」で判断できるようになります。
正直なところ、日本は木が足りない国ではありません。林野庁の資料では、国内の森林蓄積は年々増え続けています。戦後に植えたスギやヒノキが、いままさに使いごろの太さに育っている。それでも家具の現場で国産材の出番が少ないのは、育っていることと、使いやすい形で安く手に入ることが、別の話だからです。
伐って、山から下ろして、製材して、乾かす。この一連の工程を担う人手と設備が、長い低迷で細ってしまいました。木はあるのに、それを家具用の板に仕立てて安定供給する体制が追いついていない。ここが根っこの部分です。
ショールームで「国産のスギって温かみがありますよね」とおっしゃるお客様は多いです。ただ、その温かみを大きな一枚板で、しかも均一な品質で、必要な枚数だけ揃えようとすると、途端に難しくなる。木があることと、商品になることの間には、思ったより深い谷があります。
家具メーカーは、同じ寸法・同じ色味の部材を、まとまった数で欲しがります。ダイニングの脚を百本つくるなら、百本ぶんの均質な角材が要る。ここで海外材が強い。北米やヨーロッパ、東南アジアには、大規模に育て、機械で選別し、コンテナ単位で出荷する仕組みが整っています。
一方の国産材は、山ごと・製材所ごとに規模が小さく、ロットがまとまりにくい。品質のばらつきを一本ずつ人の目で見る場面も残ります。よくあるのが、「国産のほうが輸送距離も短いのに、なぜ割高なのか」という疑問。答えは木の値段そのものより、選別・乾燥・小口対応にかかる手間のコストが乗るからです。
さらに為替や輸入の波もあります。二〇二一年ごろの「ウッドショック」では、海外の住宅需要と物流の混乱で輸入材が急騰し、木材価格が世界的に跳ね上がりました。あのとき国産材にも注文が流れましたが、急に増やせる供給体制ではなかった。この一件は、日本の家具・住宅がいかに海外材の流れに組み込まれているかを、はっきり見せた出来事でした。
コストだけでは語れない部分もあります。実は樹種そのものの向き不向きが大きい。濃い色で硬く、傷に強いウォールナットは北米が主産地。粘りがあって曲げ木に向くビーチは欧州。明るく素直なオークも欧米産が安定しています。日本のスギやヒノキは柔らかく軽い。建具や内装では魅力ですが、天板や椅子の脚のように「硬さ・耐傷性」が問われる場所では、海外の広葉樹に一日の長があります。
ケースによりますが、和の質感を出したいときは国産のクリやナラ、タモが選ばれ、モダンで硬質な仕上げなら海外のウォールナットやオーク。産地は、その樹種がどこで安定して育つかという結果にすぎません。「海外だから上、国産だから下」ではなく、木の性質と使う場所の相性で決まっている。ここを押さえると、ラベルの見え方が少し変わってきます。
買い替えで迷って何軒も回ったというお客様が、最後にメモしていたのは産地ではなく別の項目でした。国産材の利点は、輸送距離が短く、湿度の高い日本の気候で長く育った木であること。四季のある風土に木がなじみやすいという声もあります。手ざわりの柔らかさ、軽さも国産の持ち味です。
海外材の利点は、硬さと色の深み、そして供給の安定です。大量生産の椅子や、傷を気にせず長く使いたい天板では、この安定感が効いてきます。反面、輸送に伴う環境負荷や、産地の合法性を確認しづらい場合がある点は差し引いて考えたい。
正直、どちらが上とは言えません。国産材は「軽さ・親しみ・地産」、海外材は「硬さ・色・安定供給」。用途と暮らし方しだいで答えは入れ替わります。片方だけを持ち上げる説明を聞いたら、いったん立ち止まってよい合図です。
では何で決めるか。産地の一段下、三つの視点を勧めています。
一つ目は乾燥。木の暴れは含水率で決まります。家具用は一般に含水率を八〜一〇%前後まで人工乾燥で落とすのが目安。国産・海外にかかわらず、ここが甘い材は、暖房の効いた冬に反りや割れが出やすい。「よく乾いていますか」と一言聞くだけで、店の姿勢が見えます。
二つ目は加工。無垢か、集成か、突板か。継ぎ手の精度、塗装がオイルかウレタンか。同じオーク材でも、加工の丁寧さで十年後の表情はまるで違います。三つ目は供給体制。人気の型が数年後に修理・追加できるか。部材を切らさず持てるメーカーやブランドかどうか。ここは見落とされがちな急所です。産地より、この三点が実の暮らしを左右します。
現品セールの前で長く迷った方が、最後に選んだのは海外オークのダイニングでした。決め手は「北米産だから」ではなく、含水率まで管理された乾燥と、同型の追加天板を後から頼める体制。逆に、寝室には国産タモを選ばれた。理由は肌ざわりと、部屋の他の建具となじむ色でした。
つまり、産地で入り口を分けず、乾燥・加工・供給という中身で一つずつ確かめた人ほど、後悔が少ない。フクタケでも、輸入だから安心とも、国産だから安心とも言いません。展示品の裏をめくり、木口を見て、乾き具合を触って確かめる。そのひと手間が、五年後の満足に静かに効いてきます。「なるほど、そこを見ればいいのか」。その小さな腑に落ちる瞬間が、いい買い物の入り口です。
A1. いいえ。国産材の品質が劣るからではなく、供給量・価格・ロットという構造が主因です。品質ではなく体制の問題と考えてください。
A2. 産地ではなく乾燥と加工で決まります。含水率八〜一〇%まで乾かした材なら、国産・海外を問わず反りにくく、十年以上使えます。
A3. 二〇二一年ごろ海外の住宅需要と物流混乱で輸入材が急騰した現象です。日本が海外材に依存する構造が表面化しました。
A4. 木の値段そのものより、小規模生産による選別・乾燥・小口対応の手間が価格に乗るためです。輸送距離は短くても割高になりがちです。
A5. しません。同じ樹種でも乾燥と加工次第で品質は大きく変わります。産地はあくまで樹種の適地を示す情報にすぎません。
A6. その樹種が安定して育つ主産地が北米や欧州だからです。硬さや色の深みを求める用途に合い、大規模に供給されています。
A7. 一般に海外の広葉樹が硬く傷に強い傾向です。天板や椅子脚に向きます。柔らかく軽い国産スギ・ヒノキは建具や内装向きです。
A8. 三点です。乾燥(含水率の管理)、加工(継ぎ手・塗装)、供給体制(追加・修理の可否)。ここを聞けば産地表示に振り回されません。
素材選びは、値札や産地ラベルの手前で止まらず、木口を見て、乾き具合を触って、その先の使い方まで想像することから始まります。次に家具を見るときは、ぜひ裏側の一枚をめくってみてください。
「海外材と国産材、うちの暮らしにはどっちが合うのか」。そう迷い始めたら、言葉で比べるより実物に触れるのが一番の近道です。木は、同じ樹種でも一本ずつ表情が違います。写真やカタログの数字だけでは、その差は伝わりません。
フクタケのショールームには、国内外の無垢材・集成材・突板が並んでいます。木口をのぞき、手のひらで乾き具合を確かめ、乾燥や供給体制のことまで遠慮なく聞いてみてください。すぐ買わなくて大丈夫です。判断の物差しを持ち帰るだけでも、次の一台の選び方が変わります。実物の前で一緒に考える。その時間が、長く付き合える家具への確かな一歩になります。
家具選びで後悔しないためには、価格や見た目だけでなく、素材や構造、耐久性、修理のしやすさ、暮らしとの相性まで含めて考えることが大切です。個別の商品を比べても決めきれない方は、まず家具選びの判断基準を全体から整理してみましょう。
▶ 「後悔しない家具選びの理由と構造整理|価格ではなく価値基準で考える全体像」を読む
価格やブランドに左右されず、自分にとっての「良い家具」を考えます。
耐久性や修理まで含め、長く使える家具の選び方を整理します。
部屋の寸法や身体との相性から、使いやすい家具を考えます。
睡眠の質と身体への相性を基準に、寝具の選び方を整理します。
価格や品質の背景にある、家具業界の仕組みを解説します。
価格だけでは分からない品質や構造、身体との相性まで、長く使うことを前提に家具選びをお手伝いします。気になる家具がある方も、何を選べばよいか分からない方も、お気軽にご相談ください。
当店は少し分かりにくい場所にあります。道に迷われた場合は、お気軽にお電話ください。近くまでお越しいただければ、お迎えにあがれる場合もございます。
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